乃木坂46中西アルノMCの音楽番組『Spicy Sessions』収録レポート&インタビュー

CS放送TBSチャンネル1にて毎月放送中の音楽番組『Spicy Sessions』。今月行われた6月、7月放送回の収録を、ゴスペラーズをデビュー当時からよく知り、数々のアーティストのオフィシャルライターを務める音楽ライター・伊藤亜希が取材。収録後のMCインタビューと合わせて番組の魅力を届ける。

CS放送TBSチャンネル1で放送中の音楽番組『SpicySessions』
CS放送TBSチャンネル1で放送中の音楽番組『SpicySessions』

メインMCを黒沢薫(ゴスペラーズ)と中西アルノ(乃木坂 46)が務める“ちょっと刺激的な”音楽番組『Spicy Sessions』。観客を公募し、目の前で“音楽が創られていく様”をみせる番組だ。昨年末にCS放送TBS チャンネル1でスタートして以降、音楽好きの間で噂になり、観覧に応募する人の数も右肩上がりに伸びている。これは、一度観覧した人、放送を観た人が、この番組から“刺激”を受け取り、楽しんでいる証拠だろう。バンドメンバーとともに、アレンジから歌のパート分け、コーラスアレンジなどが次々と決まっていく様子は、まさにドキュメント。ぶっつけ本番のようなスリリングさは“ちょっと”どころではない。前例がないという意味も含めて“かなり刺激的”な音楽番組である。出演者も音楽マニアばかりだ。放送6回目(6月放送分)、7回目(7月放送分)の収録には、平日にも関わらず、2000を超える応募があったというから驚きだ。今回も収録現場の様子とともに、MC2人の収録後の言葉を届ける。

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6月放送回のゲストはMs.OOJA。黒沢とは「Be… duet with 黒沢薫」(2016年リリース)などアーティストとしての交流が盛んだが、黒沢がプライベートで開催する、オリジナルカレーをふるまうパーティー「黒沢カレー会」の命名者でもある。そんな彼女が“推し”ている TWICEの曲を黒沢、中西とセッションすることに。楽曲は「Feel Special」に決まるが、黒沢が“歌”としてさらに聴かせるため、TWICE のプロデューサー、J.Y.Parkがセルフカバーで弾き語りをしているバージョンの要素を入れたいと提案。バンドメンバーもステージ中央に集まり、J.Y.Parkの動画をPCの画面で確認。その後、バンドはバンドでミーティング、Ms.OOJA、黒沢、中西のボーカル陣は3人で歌のパート分けや、ハモリの相談。音楽番組として前例のない光景に、観客はざわつきながらも、ワクワクした思いでミュージシャンたちのやり取りを見つめていたように感じた。本番の歌唱終わりでは、中西が「お二人が歌っている時、横で“フーッ!”って言いたくなりました(笑)」と瞳をキラキラさせながら語っていた。そんな中西が今回のソロ歌唱曲に選んだのは、ONE OK ROCK「Wherever you are」。後半のロングトーンの最中にオクターブを上げて歌い、観客を沸かせた。

TWICE「Feel Special」のセッション前に全員が集まって打ち合わせ
中西アルノがONE OK ROCK「Wherever you are」を迫力のソロ歌唱で届ける
中西アルノがONE OK ROCK「Wherever you are」を迫力のソロ歌唱で届ける

7月放送回のゲストは、決まった時から黒沢が自身のSNSで「緊張する」「レジェンドとの打合せ終了。緊張した。でもいいものになりそう」といったポストをしていた人物。黒沢薫、もっと言えば、ゴスペラーズが尊敬するアーティスト、根本要(スターダスト☆レビュー)だ。「あの人がいなかったらゴスペラーズはデビューしていない」という黒沢の言葉を受け、根本がステージに登場。スタレビの大ヒット曲「木蘭の涙」を弾き語りで披露。独特の掠(かす)れた中低音、クリアな高音をバラードに乗せてスタジオに染みわたらせ、ムードを一気に変える。トークでは中西から、根本のように音楽を自由に楽しむ秘訣を聞かれると、「この番組にぴったりな質問」と受けた根本。「ライブって正しいことをやることがすべてではない。その日、自分がこうしたいって想いがあるから、それを歌う。今日だけの私がいる。今日だけの自分を楽しめばいい」と答えた。この言葉にうんうんと頷く黒沢。感銘を受けたような表情で聞き入る中西の姿も印象的だった。白人ブルースを自身のルーツにあげた根本が選んだセッション曲は「Bring It On Home to Me」。原曲はサム・クックだが、数々のアーティストがカバーしている白人ブルースの名曲だ。この日は「いいセッションになりそうなのはこっち」と根本が言い、デイヴ・メイスンがカバーしたバージョンをセッションすることに。ブルースは進行が決まっている分、アドリブやアレンジ、つまりセッションの幅が広くなる。根本、黒沢、中西は、まさに“自由にできる音楽、今日だけできる音楽”を観客の目の前で繰り広げた。また、中西が「おばあちゃんが大好きな曲で、いつも“歌って”と言われて歌っていた」という一青窈の「ハナミズキ」を根本、黒沢、中西の3人で歌唱した際には、ハモリの百戦錬磨の根本と黒沢が、中西の歌声を生かしながら、ときには重なり、ときには歌を押し出すような繊細で見事なハーモニーを見せた。

スターダストレビュー・根本要の淀み無いトークに終始笑顔のMC陣
「ハナミズキ」で3人の歌声が重なり合う

ひとつの音楽が完成していくまでの行程、間違ってやり直す様子までを見せる。これが『Spicy Sessions』のテーマだ。そういう意味では音楽ドキュメント番組である。それに加え、ひとつの音楽には十人十色の解釈があることが分かったのが、6回目、7回目放送の収録だったように思う。「ライブに正解はない」と根本 要は言ったが、それは後の言葉から“正解はひとつじゃない”という意味にもとれる。音楽の感じ方もそうだ。『Spicy Sessions』は音楽そのものを体現している番組である。この番組を通して、いくつもの正解を見つけ出して欲しい。そうすれば、あなたの中で音楽はもっと楽しくなる。

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MCインタビュー

収録後の黒沢薫と中西アルノに感想を聞いた。


これまでも内容の濃い収録ばかりでしたが、今回は違う意味で濃かったですね。

黒沢:(根本)要さんがゲストに決まった時に、ああいう形で濃くなることは想像できていたので。そこにアルノさんをどこまで巻き込めるかっていうのが、今回は僕の中での最大のテーマでした。アルノさんは本当に大変だったと思いますけど(笑)


中西:いやぁ……そうですね(笑)


黒沢:はははははは(笑)


大変と言いつつ、なんか嬉しそうです、アルノさん(笑)

中西:あははは(笑)



今回の収録で新しい気付きがあったのではないでしょうか?見ていて、そう思う瞬間がありました。

中西:そうですね。体調や喉の調子が悪い日って、誰にでもあると思うんです。そうなった時、私は、どうやったらいつものコンディションに戻せるのか、自分の100%の状態に戻そうと試行錯誤しちゃう。でも根本さんは、喉の調子が悪い日にはその日の声がある。それが、音楽が生きている状態だとおっしゃられて。その言葉を聞いた時に、これは新しい視点だと。自分の中で大きな気付きになりました

黒沢:これは僕がアルノさんを見ていて感じていることなんだけど、アルノさんって、わりと完璧主義者というか“こうありたい”っていう理想像をしっかり持っている人じゃない?



歌に対してってことでしょうか?

黒沢:歌だけに限らず、パフォーマンスでもすべてを含めて


中西:あぁ……(うん、うんと頷く)



少し思い当たるところがあります?

中西:そういう部分、あるかもしれないです


黒沢:自分の絶対的な価値というのは持つべきなんだけど、その中で、アプローチの仕方はいろいろある。でもさっき、アルノさんが話してくれた要さんの言葉って、長い間、活動をしていく、歌い続けていく中で見つけてきたものだと思うんですね。ネガティヴな意味じゃなくて“今日は今日の声で…”って思わざるを得ないって瞬間も、長い活動の中にはたくさんある。つまり、正解はひとつじゃないというか。自分の揺らぎ……というか幅、みたいなことを認めるのもひとつの形



いろんな場面に対処できる、選択肢をたくさん増やしていくってことでしょうか?

黒沢:そうそう。選択肢


中西:それを今回の収録で教わりましたね


黒沢:毎回、いろんなタイプのゲストとセッションしてきて。アルノさんは毎回、すべてのゲストが初対面なわけで。その中で、どう自分を出していくか、どうコントロールしていくかは、本当にずっと悩んで来たことだと思うし、これからも悩んでいくと思うんです。そんな中で今後“あぁ、今日はこれくらいがちょうどいいんだ”みたいな感覚が、少しずつ増えていくと思うんですよ。そういう別の道を見つけてから、自分が思う本筋を突き詰めると大きく変わると思うんです。バンドメンバーとのセッションもね、すごく楽しそうだし


中西:すごく楽しいです

黒沢薫と中西アルノ



タンバリン、今回も登場しましたしね。演奏前の打ち合せもどんどん自分からバンドメンバーに質問していましたよね。本番中は、アイコンタクトもあったし。


中西:そうなんですよ。そうやってアイコンタクトで、タイミングを合わせることができて。合うとやっぱり気持ちがいいんですよね。バンドのみなさんとのコミュニケーションも含めて、自分が音楽に溶け込んでいるなって実感します。それがすごく嬉しいし、楽しい


黒沢:バンドメンバーと一緒に演奏するって、ほかの現場じゃあまり無いじゃない?


中西:無いですね


黒沢:そうだよね。そういう新しい経験を自分の中に取り込むことで、歌も変わってくるんですよ。歌も演奏の一部だからね。どんどん、今、アルノさんは幅が広がっている状態なんです、素晴らしい



言葉は優しいですが、今、プレッシャーかけてません?

黒沢:そんなこと、ありません(笑)。アルノさん、大丈夫ですよね?


中西:(笑)はい、大丈夫です



アルノさんに伺いたいのですが、毎回、ゲストの方を黒沢さんがスパイスに例えて、そのスパイスを使ったカレーを食べますよね。それって食べた瞬間“あぁ、わかる”って感じはあります? なんかすごい質問になっていてすみません。


中西:食べた瞬間は…いろんなスパイスだったり、食材の旨味だったり、いろんなものが混ざっているので、どれがそのスパイスなのかは、正直わからなくて……



そうですよね。黒沢さん、ゴスペラーズのグッズで「PON Curry」ってレトルトのカレーをレシピから作っているんですけど、それでさえ、本格的すぎて。

中西:(笑)。でも今日のMs.OOJAさんへの例えは分かりやすかったのと、あと黒沢さんの説明を聞いたりとか、実際に(例えたスパイスを単体で)香りをかいだりすると“あぁ、なるほど!”ってなりますね


黒沢:毎回、あぁいえばこういうみたいな説明でね、ごめんね


中西:あははは(笑)。そんな。私、スパイスの知識がないので、名前だけ聞くと“なんのこっちゃ”って思うんですけど、説明を聞いて実際にカレーを食べると納得しますね


黒沢:その“なんのこっちゃ”ってところまでを含めてが、プロデューサーの狙いらしいよ(笑)


中西:この番組をやらせていただくようになってから、しょっちゅうカレーを頼むようになりました(大爆笑)

中西アルノ、黒沢薫、Ms.OOJAでカレーを食べる


視聴者からのリクエストに応え、第1回から第5回までの一挙再放送も決定している『Spicy Sessions』。知人には、世界地図を広げながらカレーの話をすることもあるという黒沢薫のスパイスとカレーに対する熱弁、回を追うごとにカレーに魅せられていく(?)中西アルノの変化もチェックしたら楽しいと思うが、なによりも回を重ねるごとに、どんどんエネルギーが増していく、生きた音楽番組『Spicy Sessions』の成長の過程をしっかり目撃して欲しい。音楽は、本当に生き物だ。

取材 音楽ライター・伊藤亜希

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『Spicy Sessions』

放送情報:CS放送TBS チャンネル1

2024年6月29日(土)午後10時00分〜午後11時00分
『Spicy Sessions with Ms.OOJA』

2024年7月20日(土)午後11時00分〜深夜0時00分
『Spicy Sessions with 根本要(スターダスト☆レビュー)』

2024年6月29日(土)午前11時〜午後4時
『Spicy Sessions』第1回〜第5回を再放送 ゲスト:[第1回]平原綾香、[第2回]クリス・ハート、[第3回]浪岡真太郎&大島真帆(Penthouse)、[第4回]May J.、[第5回]川崎鷹也

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