日本の映画界を担う若手作家4作品を一挙上映!「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2021」上映会

文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2021」において、今年度の製作実地研修で完成した短編映画4作品の「合評上映会」が2月2日(水)都内で開催された。

登壇者

団塚唯我監督、道本咲希監督、藤田直哉監督、竹中貞人監督、野内まる、フジエタクマ、金澤卓哉、上坂美来、白川和子、佐野弘樹、遊屋慎太郎、小槙まこ、鈴木福、黒崎レイナ、笠井悠聖、林裕太

文化庁の事業である映像産業振興機構(VIPO)が企画・実施する「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2021」で製作された短編映画4作品が、一般公開に先駆けて合評上映会でお披露目された。舞台挨拶に登壇した4人の若手監督は、多くの観客で埋まった客席をみて、無事にスクリーンで作品を観てもらえることに安堵し嬉しそうな様子だった。


上映された4作品は、『愛をたむけるよ』が、なら国際映画祭、下北沢映画祭、TAMA NEW WAVE、うえだ城下町映画祭 等の映画祭で入選、受賞を果たした団塚唯我監督の『遠くへいきたいわ』、学生時代に制作した映画『19歳』が PFFアワード2018・審査員特別賞を受賞した道本咲希監督の『なっちゃんの家族 』、『stay』が SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020短編部門にてグランプリを受賞した藤田直哉監督の『LONG-TERMCOFFEE BREAK』、藤田弓子を主演に迎え、2021年に劇場公開を果たした『羊と蜜柑と日曜日』を監督した竹中貞人監督の『少年と戦車』。

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合評上映会は、文化庁の山田素子参事官の挨拶ではじまり「今回の4名の監督におかれましても、本プロジェクトを契機として、国内外で広く活躍し、映画界を盛り上げてくださることを心より期待しています。この4名の新しい才能が大きく飛躍できるよう、今後もご支援お願いします」と若手監督たちへ激をとばした。

遠くへいきたいわ

1作品目の『遠くへいきたいわ』の団塚監督は、今回の映画についての狙いが「今までは実体験をベースに脚本を書いてきたんですが、それだと映画が閉じていくというのが今までの反省点だったので、映画をいろんな人に観てもらうために、好きな映画をいっぱい観て、演出や脚本を開いた感じにしようと思って書いていきました」と明かす。そして今後の目標として、「今までは母の喪失のような、親子の映画を撮っていたんですけど、(尺が)短いということもあって、父親を出していなかった。だから次は父親との関係をフォーカスしながら作りたい。親子の映画をもうちょっと頑張りたいなと思ってます」と意欲を見せた。主人公・朝倉紗良役の野内は、オーディションで選ばれたという本作について「初演技というか、はじめてのことばかりで、緊張していましたが、現場はあたたかくて楽しかったです」と振り返った。


なっちゃんの家族

続いて2作品目『なっちゃんの家族』の道本監督は、今回の作品テーマを選んだ理由について「実体験が大きくあるんですけど、テーマとして中途半端な家族関係を描きたくて。家族の虐待や暴力、家族での会話がないということは、なかなか他の方に訴えかけづらい。解決も出来ないし、そういう問題ってあるなと。そういうことを描きたいなと思って、こういうお話を作りました」と説明。また、主人公なつみ役の上坂を選んだ理由として「子どもらしい部分もありつつも、ふとした時に大人をジッと見つめている目が、なんだか見られているなという感覚があって。なつみに合うなと思いました」とコメント。一方の白石は「うちの孫はもう成人していますけど、名前が“ナツミ”なので親しみがありました。わたしは撮影の現場が大好きですし、劇場の一緒の空間の中で共有できる時間が大好きなので。欲張りですが、どんな役でもいいんで、年に3本は映画に出たいなと思っています」と意欲を見せた。そして今後の目標を尋ねられた道本監督は「今まで作った作品も私の実体験が入っていて。今回の作品もそうですが、主人公と同年代だったり、自分が経験したことを作ってきたんですが、そろそろそこから離れていきたいなと。自分の感覚とは遠い人たちを撮っていきたいなというのと、あとは家族の問題には興味があるんですけど、今後は笑えたりするシーンがあるような映画を撮っていきたいなと思います」と意気込みを語った。


LONG-TERM COFFE BREAK

3作品目『LONG-TERM COFFE BREAK』の藤田監督は、「そもそも今まで、男女の関係を描いたような作品を作ってこなかったので。そういう作品を作りたいなと思いました。それならば女性を主人公に。男性が撮る従来の女性像をどう乗り越えるかということにも興味があって作りました」と説明。さらにこだわったところについて藤田監督は「やっぱり30分という尺なので、どう飽きさせないか、展開していくかを考えていて。ある種の飛躍というか、大胆に時間を飛ばしたり、事後を描いたり、でもその合間の部分は、見ている人がイメージで補完してもらうというところは、どれくらいあてるべきかは意識しました」と説明。そして今後の展望については「ジャンルに囚われない映画を作っていきたいですね」と意欲を見せた。一方、そんな藤田監督の演出ぶりについて佐野は「結構、的確に行動だったり、声のトーンだったりを演出していただきました。ここのシーンはこういう意図があるからこうしてほしいということではなくて、一回やってみて、そこの動きを見た上で、ここの1行だけこういうトーンでやってほしいというような細かい演出もあったので。ある程度、頭の中で完成した画があるんだなと思いましたね」と振り返った。


少年と戦車

そして4作品目の『少年と戦車』の竹中監督は、「少年と戦車というテーマは、実体験をベースに考えたものなので楽しんでいただけたらうれしいです」とあいさつ。主人公の鈴木は「監督とも撮影に入る前にも、撮影に入った後でも、細かくお芝居をつけてもらったりしながら、監督のやりたいことに近づいたかなと思いましたね」と述懐。竹中監督と鈴木とはよきディスカッションを積み重ねることができたそうで、竹中監督も「一番のベテランなので、座組を引っ張ってくれた」と全幅の信頼を寄せている様子を見せつつも、「僕にとっても主演の俳優さんとディスカッションしながら作るというのは初めての経験でした。この映画のディスカッションを深く深くして、それによってまわりができあがって構築されていく。特に福くんはまわりの役者さんとの空気感を構築していくれて。お芝居を撮りやすい空気感を作ってくれて。頼もしいなと思いました」とコメント。そして今後の展望としては「派手なエンタメが作りたいですね。内容的にはいろいろな企画を考えています」と語った。また本作で初のキスシーンを披露した鈴木は、「台本だと、戦車の上でと書いてあったんですけど、本当に戦車の上でやるんだなと思いましたね。僕の理想とはちょっと違うけど、こういった感じに、男のロマン的な、戦車と女性との関係を、そういう表し方をされるのはすてきでした、戦車の上でキスシーンが出来る俳優もなかなかいないのでありがたい。まさかのファーストキスシーンが、戦車の上でと言うのも面白いなと思います」と振り返った。

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スーパーバイザーの香月純一氏は4人の若手監督それぞれに称賛のメッセージを送り、「ndjc2021の応募は49名でした。2019年度が39人、2020年度が44名でしたから毎年5名ずつ増えていっています。これからの4人の監督の活躍に期待したいと思います」と締めくくった。会場からは監督たちへの期待を込めた温かい拍手が広がり、合評上映会は好評のうちに幕を閉じた。


2/25(金)より、角川シネマ有楽町を皮切りに、大阪(3/4〜)、名古屋(3/18〜)にて一般公開

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