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黒沢薫&中西アルノ「Spicy Sessions -THE LIVE-」ライブレポート&インタビューが到着!

CS放送TBSチャンネル1にて毎月放送中の、ゴスペラーズ黒沢薫と乃木坂46中西アルノがMCを務める音楽番組『Spicy Sessions』。先月開催された番組イベント「Spicy Sessions -THE LIVE-」を、デビュー当時からゴスペラーズをよく知り、数々のアーティストのオフィシャルライターを務める音楽ライターの伊藤亜希が取材。11月29日(土)に放送するイベント前半(第1部)の模様とMCへのインタビューを合わせてお届けする。

「Spicy Sessions -THE LIVE-」



ライブレポート

10月24日(金)にKT Zepp Yokohamaで番組初のライブイベント「Spicy Sessions –THE LIVE–」が開催された。満員の客席。開演前のざわめきは、この日のライブへの期待を表していた。この期待は、『Spicy Sessions』という音楽番組が積み重ねてきた、音楽リスナーからの信頼の証だ。『Spicy Sessions』の歴史が、そのまま熱量として会場に漂っていた。2023年冬、“ちょっと刺激的”な音楽番組としてスタートした
『Spicy Sessions』は、毎回ゲストを迎え、譜面を囲み、歌割りを決め、その場限りのセッションを披露し、間違ったり納得できなかったらやり直す……そんなスタンスで音楽と向き合い、目の前で音楽が出来上がるさまを届けてきた。曲が完成する“直前”の緊張と“直後”の興奮が、この日、ついに“本物のライブ”で表現された。客席がスッと暗くなる。薄闇に沈むステージ上で、バンドメンバーがスタンバイする。ステージバックに設置された巨大なスクリーンに、番組の名場面が映し出されていく。映像の最後を飾ったのはこの文字だった。


「Spicy Sessions –THE LIVE–」。


大きな拍手の中、MCの黒沢薫と中西アルノがステージに。オープニングを飾ったのは「獣ゆく細道」だった。本曲は、黒沢がソロデビュー20周年を記念してリリースしたEP『Singaholic』に、中西をゲストボーカルに迎え、収録されている。『Spicy Sessions』が生んだコラボレーションだ。黒沢と中西が、低音域から高音域をすれ違うように行き来する。観客が2人の歌に集中していくのが分かる。最後の<狭き道をゆけ>のワンフレーズは、最後の一音のクレッシェンドのかけ方までぴったりとタイミングが合っていて、まさに2人の呼吸で聴かせる仕上がりになっていた。観客の大歓声を受けて笑顔になる2人。「さあ始まりました!『Spicy Sessions –THE LIVE–』!」と第一声をあげたのは黒沢。中西は「ライブはスタッフさんやMC、バンドメンバーの夢だったので、多くの人に音楽っていいなと思っていただけるように」と想いを告げる。黒沢に「獣ゆく細道」の感想を求められると「私たちらしい『獣ゆく細道』にできたんじゃないかと思います」とコメント。この日のリハーサルに話題が移ると、「皆(ゲスト)の声がでかいよね」と黒沢。「感化されて、どんどん私も力んでいくっていう(笑)」と中西。MC2人のトークに、観客も笑い、リラックスしていく。

「獣ゆく細道」(中西アルノ、黒沢薫)

最初のゲストはPenthouseの浪岡真太郎と大島真帆。大島の「私たちの代表曲を。よければ一緒に手を振って聴いていただけたら」という言葉から、アップチューンの「我愛你」へ。2人に合わせて、観客も、舞台の端から見つめる黒沢と中西も、楽しそうに大きく手を振っていた。第3回(2024年3月放送)のゲストだった浪岡と大島。リバイバルセッションとして、そのとき披露した「Layla」と「やさしいキスをして」を、放送時からアレンジを加えた形で歌唱する。さらにここで、ゲストとしてPenthouseの矢野慎太郎が呼び込まれた。矢野は第3回の収録を客席から観覧し、それ以降ファンとして番組の感想などをSNSで発信。スパ民(黒沢が考案した『Spicy Sessions』のファンネーム)の中でお馴染みの存在になった矢野の登場に会場が沸く。「Layla」では、浪岡、黒沢というハイトーンが武器のボーカル2人が、声音とアプローチの違いで、それぞれの個性をぶつけ合う。浪岡は少しハスキーな濁音が混じったようなトーン、黒沢はクリアなトーンでこぶしを回すなど、高音域のロングトーンだけでも聴かせ所が次々に繰り出されるので、ぜひ放送で堪能してほしい。続いて、大島と中西で「やさしいキスをして」を。今回ライブで歌唱されるリバイバルセッション曲は“ひとスパイスを加える”がテーマ。黒沢から「前回は『やさしいキスをして』で真帆さんが全部コーラスをしてくれた。今回は(ひとスパイスとして)アルノさんもコーラスを」と任された中西は、“師匠”黒沢からのリクエストをしっかり形にしていた。後半のロングトーンでは、大島の歌声に合わせるように、クレッシェンドのかけ方までぴったり。この2年間での中西の成長が顕著に表れた1曲だった。歌い終えた後「パワー感が揃った感じ」という黒沢のコメントに、嬉しそうにする中西。リバイバルセッション曲について、浪岡は「楽しいですね。こういう曲をやっている時が一番いい」と。音楽ファースト、ゲストファーストを貫いてきた番組とMCにとって、最大の褒め言葉だったのではなかろうか。

「我愛你」(大島真帆、浪岡真太郎)
「Layla」(黒沢薫、浪岡真太郎/矢野[ギター])
「やさしいキスをして」(中西アルノ、大島真帆)

Penthouseの3人が一旦ステージから降りた後、ソロデビュー20周年を迎えた黒沢が「今まで応援してくれた方への感謝の曲。皆さんへの感謝の気持ちを込めたいと思います」と、ソロのオリジナル曲「夢みる頃を過ぎても」を歌う。終わると中西が「(観客の)皆さんの顔を見ていたら、どんどん黒沢さんに吸引されていくような。歌に力がある方なんだな、師匠は」と興奮気味に感想を述べた。

「夢みる頃を過ぎても」(黒沢薫)

続いて登場したのは、スターダスト☆レビューの根本要。ギターを肩からさげ「本日はお招きありがとう!」と歌いながら挨拶をした後、根本が披露する曲を告げると、会場から大歓声が起こった。その曲は「今夜だけきっと」。黒沢と中西もコーラスで参加。間奏では、この日、バンドメンバーとして参加していた本間将人のサックスがブロウする。最後は根本が超ロングトーンを響かせ、観客を圧倒した。第7回(2024年7月放送)
にゲスト出演した根本。「ミュージシャンが集まって、何かを創ろうという気持ちが前面に出る。予測されたものじゃない楽しさがあった」と振り返る。中西は根本の「調子が良くなくても、その時の声を大事にすれば良い」という言葉が忘れられないと回想。黒沢が「あの時(=第7回)より、3人ともアドリブがうまくできるんじゃないかな。アルノさんは特に」と言うと、根本が「悪い子になってきたね」と中西を見て、会場の笑いを誘う。こんな会話を受け「Bring It On Home to Me」、「ハナミズキ」を続けて披露することに。「Bring It On Home to Me」では、間奏でバンドメンバーが順番にソロ演奏。それぞれのソロが終わるたびに、MC2人と観客から拍手が起こる。締めは根本のギターソロ。ギターで弾いたメロディーと同じメロディーを、オクターブを変えて歌うという根本の信じられない技が飛び出した。「ハナミズキ」は、根本と中西のボーカルのコントラストが楽曲を彩る。そのコントラストを活かしながらも、時にコントラストの間を埋めるように、黒沢がスキルの引き出しをバンバン開けていく。この曲で見せた、黒沢のファルセットのコーラスからハイトーンにつなぐシーンは、間違いなくボーカリスト・黒沢の真骨頂のひとつ。放送を視聴される方は、ぜひともチェックしていただきたい。

歌いながら登場する根本要
「ハナミズキ」(中西アルノ、根本要、黒沢薫)

再びPenthouseの浪岡、大島、矢野の3人をステージに呼び込む。黒沢の選曲で「ラブ・ストーリーは突然に」を、根本、Penthouseの3人、黒沢、中西、バンドメンバーでセッション。黒沢は「小田(和正)さんは、クリアテナーじゃないですか。だから、声がガラガラしている人に歌ってほしかった」と、根本と浪岡に視線を向ける。そして「僕は佐藤竹善さんの(コーラス)パートをやりたい!」と語尾強めで主張。コーラス、そして主張。ゴスペラーズの黒沢がちょっとだけ顔を出した。ゲストの矢野とバンドメンバーたちが打ち合わせに入る。その間、ボーカル陣も打ち合わせをしながら「サビの下ハモがいいんですよー」と、黒沢がリスナーに戻ったような言葉を独り言のように呟く様子に、ついつい爆笑してしまった。「ラブ・ストーリーは突然に」は、イントロのギターのカッティングが楽曲を象徴する重要なファクター。ステージ上には、根本、矢野、そしてバンドメンバーの三沢崇篤と、ギターが3人。イントロ誰がやる? どうぞ、いやそちらがどうぞ、みたいなやりとりに大爆笑してしまった。楽しい。本当に観ているだけで、音を聴いているだけで楽しい。フラットな状態で、感覚すべてを解放してライブを楽しんでいる、1人の観客になっている自分がいた。根本が試しで弾くことに。最初のカッティングギターを鳴らすと、まだ半分打ち合わせ中だったバンドが、演奏に入ってきた。「カウント無しってこと?」と慌てながらも、どこか楽しそうな黒沢。不意打ちでチャカチャーン、バンド入る。根本喜ぶ。根本、マイクスタンドの前に立つ。ボーカル陣もスタンバイしようとする中、またチャカ
チャーン!楽器陣たちが反射的に演奏を始める。相手の出す音に反応して自分が音を鳴らす、これぞセッションだ。ものすごく楽しい遊びを見つけちゃった!みたいな根本を黒沢が制し、「ラブ・ストーリーは突然に」へ。

「ラブ・ストーリーは突然に」歌唱前の打ち合わせ

ライブの前半が終了。「恐怖におののいていたフェイクやアドリブに、今回は楽しく飛び込んでいけた」と中西。黒沢は「ゲストが素晴らしいので、毎回僕も全力でぶつかっている。だから良いものを出せているのかな」と感想を述べた。「Spicy Sessions –THE LIVE–」。音が生まれる瞬間の尊さと、誰かと声や音を共有する歓び。この日、この時、この場所で、そのすべてが確かに形になっていた。

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MCインタビュ—

——まずはオープニングを飾った「獣ゆく細道」について。今日のライブで、最も“待たれていた1曲”だと思うんですよ。そういうプレッシャーはありました?

中西:はい。すごく緊張していましたし、お客さんも最初は緊張していたと思うんですけど、独特の張り詰めた空気にぴったりの曲だなとも思いました。プレッシャーはありましたけど、歌の力に背中を押してもらいました。


黒沢:ライブ前にアルノさんが「緊張します」って言ってたんですよ。だから「緊張しないといい歌を歌えない」って話をしたんです。ライブで何かを間違う時って、例えばツアーだと3本目か4本目。少し慣れてきたタイミングなんです。『Spicy Sessions』でライブをやるのは初めてだから、緊張するのは当たり前。でも、緊張しながらそれを楽しまないと。まぁ、そもそもね、曲自体が緊張感バシバシだから。正直、僕も本番前は緊張してました(笑)。ある意味「獣ゆく細道」って『Spicy Sessions』を表しているタイトルだと思うんですよ。



——“獣ゆく細道”って言葉が『Spicy Sessions』を表している?

黒沢:そう。これまであった音楽番組の中で、独自路線を、細い道を行っていると思うんです。



——細い道……ニッチとかマニアックという意味になりますかね。

黒沢:そう、そう。しかもそこをかき分けて、かき分けて、でも自分たちはそれを信じて突っ切って進んでいる。そういう意味と、MCが2人で歌うということを含めて、「Spicy Sessions -THE LIVE-」の1曲目にふさわしい曲だと、歌っていて改めて思いました。それから、アルノさんも言ってたけど、歌い終わった後、お客さんの、拍手しつつも緊張している感じが、1回目の収録に似ていて。“あ、最初こうだったな”と。そこから、どういう番組か分かってきて、観客や視聴者の皆さんが喜んでくれるようになっていったんだったなぁって。そのことを思い出しましたね。



——第1部のラストで披露した「ラブ・ストーリーは突然に」について。黒沢さんが「<あの風になる>の歌詞は、アルノさんに歌ってもらいたい」と何回かおっしゃっていましたよね。中西さんのパートを歌詞で決めることはあるんですか?

黒沢:歌詞だったり、ハモリのラインとかも含めて「これはアルノさんだよね」みたいなのは、僕の中で、もうはっきりしていますね。「ラブ・ストーリーは突然に」に関しては、<あの風になる>をカッコよく歌ってくれそうなのは、アルノさんだなと。これは曲が決まった段階で既に僕の中ではイメージが固まっていました。<あの風になる>で余韻を残して、次へ行かせる……それが、めちゃくちゃ上手そうだと思って。だから<あの風になる>はアルノさんに歌ってもらったんです。



——中西さん、どういう気持ちで<あの風になる>を歌ったんですか?

中西:「ラブ・ストーリーは突然に」をセッションしたボーカルの方々が、個性が強いメンバーだと思うんです。


黒沢:強いねー。


中西:皆さん、パンチもパワーもある方ばかり。その中で私に<あの風になる>を託されたことの意味が、瞬時に頭に浮かんで。私はちょっと優しく歌おうと思って、アプローチしたんです。<あの風になる>という歌詞も、あえて語尾を伸ばさず、短めに切って、余白を残すとか。そんなことを考えながら歌わせていただきました。


黒沢:もうほんっと、ばっちり。解釈もアプローチも。きっとアルノさんは、そういうアプローチで来るだろうなと思った。スムースに歌ってもらって、風になるって言いながらスッて消える感じ。あのニュアンス、本当に良かったですよ。



——確かに。あれだけボーカリストがいると、歌い繋ぐだけでも、声圧に圧倒されちゃう感じはありますよね。圧倒されている中、中西さんの<あの風になる>が出てきて、曲に戻されました。

黒沢:そう。そうしたかったから、伝わっていたのなら本当に嬉しい。観客の皆さんも喜んでくれていたので、選曲して良かったと思いました。

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『Spicy Sessions -THE LIVE- 第1部』

放送日時:2025年11月29日(土)午後11時30分〜深夜0時40分

放送チャンネル:CS放送TBSチャンネル1

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/series/yRNA2/


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