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「Spicy Sessions -THE LIVE-」イベント後半(第2部)のレポートが到着!

CS放送TBSチャンネル1にて毎月放送中のゴスペラーズ黒沢薫と乃木坂46中西アルノがMCを務める音楽番組『Spicy Sessions』(スパイシーセッションズ)。2025年10月に開催した番組イベント「Spicy Sessions -THE LIVE-」を、ゴスペラーズをデビュー当時からよく知り、数々のアーティストのオフィシャルライターを務める音楽ライターの伊藤亜希が取材。『Spicy Sessions』の魅力を伝えるレポートの第11弾として、12月27日(土)に放送するイベント後半(第2部)の模様を、MCインタビューと合わせてお届け!

「Spicy Sessions -THE LIVE-」



ライブレポート

「思い出が止まらなくなる」(中西/コーラス:黒沢)

刺激的な音楽番組として2023年12月に放送を開始した『Spicy Sessions』。今年10月24日、神奈川・KT Zepp Yokohamaにて番組史上初のライブイベント「Spicy Sessions –THE LIVE–」を開催した。この日のライブチケットには、アリーナクラスの会場が埋まるほどの申し込みがあったそうだ。まさにプラチナチケット、プレミアムな一夜となった。そしてもうひとつ、プレミアムな空間を演出したものがある。ステージバックに設置され
た巨大なスクリーンだ。当日はオープニングで『Spicy Sessions』の名シーンをダイジェストで流すほか、演出面でも大活躍だった。どう活躍したのか。例えば音楽シーンを基準にするならば、ライブハウス規模の会場では、ステージ背面にあれだけ大きなスクリーンが設置されることは“ライブ”においてはほとんどない。筆者も
ファンミーティングで数度、見かけたくらいだ。もしZeppクラスで設置するなら、ライティングとの相乗効果を狙うLEDスクリーン、もしくは普通のスクリーンでも、楽曲を彩るイメージ映像を流すのが、今の王道パターンだ。要するに、音楽シーンから見れば、かなり規格外なスクリーン。本番後、番組プロデューサーの竹中優介氏に質問をぶつけてみた。ステージバックの巨大なスクリーンは、後の放送を考えてのことだったのか、と。「それよりも歌っている時の表情を見せたかったんですよ。バンドのサウンド、歌声、それから、歌っている時の表情。これが全部セットにならないと『Spicy Sessions』の良さ、この番組の価値が伝わらないと思ったんです」


「Spicy Sessions –THE LIVE–」は、番組の制作スタッフがライブ制作も担った。黒沢、中西、バンドメンバー、そして多彩なゲストたち。次の日に自身のライブがあるにも関わらず、出演を快諾したアーティストもいた。それぞれの音楽に対する想い、番組に対する想いがなければ「Spicy Sessions –THE LIVE–」は成立しなかった。いつもの収録では、出演者の目の前でカンペを出している竹中プロデューサーが、この日は別場所からイベント全体の進行指示をしていた。黒沢が「いつもは近くにいるのに、ライブの時はいなかったから、少し緊張した(笑)」と、後日、筆者に教えてくれた。

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「Spicy Sessions –THE LIVE–」前半を終え、しばしの休憩後、後半がスタート。


バンドセッションに導かれるようにMCの2人がステージへと再び登場。会場からは大きな拍手が起こる。黒沢の「生バンドでの本格的なライブは初めて?」という質問に「はい。お客さんとバンドメンバーとの板挟みになっている感じ」と、中西“独特”の初手が決まり、会場の空気が和んでいく。「第2部」1組目のゲストとして呼び込まれたのは、Little Glee Monsterのかれんとmiyou。モータウン調のブライトチューン「Pop Like A Star」をカラフルなライティングの中で披露した。第11回(2024年11月放送)に出演したかれんとmiyou。出演後の反響がすごかったと語るかれんは、黒沢ファン、中西ファンからも反応があって嬉しかったと明かす。番組出演時に披露したセッション曲に“ひとスパイス”加えてお送りする“リバイバルセッション”では、かれんと中西で、三浦大知の「ふれあうだけで~Always with you~」、miyou と黒沢でダニエル・シーザー&H.E.R.の「Best Part」を続けて歌唱した。歌う前に「今日のアルノちゃんのフェイクは前よりパワーアップしてそう」と期待を寄せていたかれん。歌唱中、中西が歌うパートで、同じように口を動かしながら、幸せそうな笑顔を浮かべる姿が印象的だった。

「Pop Like A Star」(かれん、miyou)
「ふれあうだけで 〜Always with you〜」(中西、かれん)
「Best Part」(黒沢、miyou)

続いて披露された「Best Part」では、黒沢とmiyouが魅せた。miyouは、昨年の番組出演時に“もう1回やりたい”って冗談で言ったら本当になったと、歌唱前に話していたが、その第11回の収録時よりも艶っぽさ、そして滑らかさが増した印象。曲の後半、お互いの歌声を探りながら、ロングトーンでせめぎ合う。バンドサウンドが2人に引っぱられて、サウンドのレイヤーを重ねていく。セッションとデュエットソング、二つの真骨頂を同時に発揮し、そのエネルギーに観客の気持ちが高揚していく。歌唱後「終わらないかと思った」とmiyouの第一声。かれんが「セッションしてましたね!」と感想を述べる。miyouは「止まらんかった」、黒沢は「お互いロングトーンでいっちゃうと、戻れないよね」と、とても楽しそうであった。今回のリバイバルセッションは、過去の再現ではない。番組の積み重ねを踏まえた上で“今、同じメンバーでやったらどうなるか”を体現するスタンスなのだと思った。


かれんとmiyouがステージを後にし、中西のソロ歌唱へ。ちなみに「Spicy Sessions –THE LIVE–」前半(第1部)では、黒沢が自身のソロ曲「夢みる頃を過ぎても」を歌唱している。「自分が(乃木坂46の)センターとして立たせてもらっている曲の中でも、好きな曲。バンドの皆さんのアレンジで、またお聴かせできたら」と、中西が選んだ曲のタイトルを告げる。「思い出が止まらなくなる」(乃木坂46)。タイトルだけで、あちこちから歓喜の声が上がった。中西は<星空に届きそうな>という歌詞に合わせて、手を空に向けて差し出すようなジェスチャー。言葉を一音一音、確かめるように置いていく。歌詞の余韻が、客席の隅々まで行き渡っていく。先述したセッションでの柔軟性や、声量のコントロールとはまた異なる、ソロならではの集中力が際立つ瞬間であった。初回放送から半年間ほど、黒沢からのリクエストに対して中西は、教えてもらった通りに頑張る、とい
う取り組み方だったように思う。2年を経て彼女は、自分のオリジナリティーを求める表現の探求者になっていると感じた。


「虹の向こうへ」(平原)

番組初イベント、最後のゲストは平原綾香。『Spicy Sessions』第1回にゲストとして出演した彼女の登場は、番組の“原点”を想起させる。「自分の歌の中で、歌って、サックスを吹く曲は初めて」と、2024年リリースの「虹の向こうへ」を披露。<ほら虹のにおい>という歌詞に合わせて、ステージ上のライティングも柔らかな虹を描く。歌唱後に「素敵……」と中西。人間とは、本当に感動した時には言葉を失うものだが、観客の気持ちを中西が代弁しているように見えた。黒沢は「正解が見えない第1回の収録。そこに平原さんが来てくれて本当に良かった」と初回放送を振り返った。続いて、リバイバルセッションのコーナーへ。平原と黒沢によるレイ・チャールズの「Georgia On My Mind」は、原曲の持つブルージーな湿度を下敷きにしながら、平原のサックスが新たな風を吹かせ、黒沢のボーカルがその風に乗っていく。初回放送から『Spicy Sessions』を知る視聴者にとっては“再会”であり、ライブの観客にとっては“進化形”として提示された1曲だったのではなかろうか。続いて、平原、黒沢、中西の3人で玉置浩二の「ロマン」。声質の異なる3人が、互いの響きを尊重しながら音を重ねていく。『Spicy Sessions』が大切にしてきた“音楽ファースト”のマインドが、会場に広がっていく。ちなみに、黒沢曰く「(初回と比べて)ちょっとだけアルノさんのハモリが増えてます」とのこと。ぜひ、放送で確認してみてほしい。

「ロマン」(黒沢、平原、中西)

Little Glee Monster のかれんとmiyouが再びステージに。セッション曲として中西が選んだ曲は、映画「グレイテスト・ショーマン」の主題歌「This Is Me」。ボーカル陣がステージ上で、歌割りやアレンジを確認している。ステージ上にいる全員が、音楽という煌めきの粒子を拾い上げていく。演奏が始まると、それぞれの個性がせめぎ合う。5人で歌っているはずなのに、それ以上の歌声のレイヤーを感じさせる音像に、そこにいる誰もが圧倒される。倍音も操る声の猛者たちが、それぞれを称えるように、歌声を響かせていく。この美しくも音圧のある歌声を受け止めるSpicy Sessionsバンドの演奏もお見事であった。

中西の選曲で「This Is Me」をセッション

アンコール。スタッフ用のセットリスト資料に「バンドメンバー紹介セッション」と記されているのが、なんとも『Spicy Sessions』らしい。本間将人(Sax/Key)、三沢崇篤(Gt)、荻野“PEPU”哲史(Ba)、髭白健(Dr)、佐藤雄大(バンドマスター/Key)が順番に紹介され、それぞれがソロ演奏を披露し、会場を沸かせる。黒沢が「最後は、あの曲で盛り上がりたいと思います」と言った後、中西、バンドメンバーに目配せをして「せっかくなんで、あのフレーズも歌ってください」と声を張り上げた。ラストを飾ったのは、MC2人のコンビで、ロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」。カラフルなムービングライトが、ステージと客席を行き来するように照らす。まるで、それぞれの感謝を伝えるボールのように。観客も一緒に歌い、踊っている。フィニッシュのタイミングは、中西がジャンプして決めた。大歓声と拍手の中、黒沢薫、中西アルノ、Spicy Sessionsバンドのメンバーがステージ前方に出てきて、マイクを通さず「ありがとうございました!」と言って、ライブは幕を閉じた。

「APT.」(中西、黒沢)

ゲストの平原綾香から「セッションって正解も答えも果てもないから、そこが楽しいよね」という名言も飛び出した「Spicy Sessions –THE LIVE–」は、これまでの“集大成”であると同時に“通過点”でもあった。音楽が生まれる瞬間の尊さ、セッションをすることの歓び。これらは、この一夜で完結するものではない。なぜなら、変わり続けていくこと、それがセッションなのだから。

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MCインタビュー

ステージを終えた後の黒沢薫と中西アルノにインタビューを行った。

黒沢薫、中西アルノ インタビュー

——「This Is Me」を選曲したのは中西さんだったんですね。

中西:はい。私からセッション曲のリクエストをすることは少ないんですけど、私なりに『Spicy Sessions』って意味を考えた時、一番体現している曲だなと思って選びました。今日のメンバーなら絶対に、すごいセッションになると思いましたし、あとはもう……いちファンのような目線で、バンドと合わせてやっているのを聴きたいなっていう(笑)。


黒沢:わかる、それ(笑)。


中西:ですよね?(笑)だから歌割りを決めるのも、この人はこのパートが絶対かっこいいだろうなって考えただけで楽しくて。もう、ウキウキでやっていました!



——曲が進んでいくにつれて、素人の耳にもどんどん難しいことになってるなって分かって。でも、歌っている方は、難しくなるほど笑顔になっていったんですよね。難しいほど楽しめるとか、あるんですか?

黒沢:あると思いますよ。歌う喜びに、ハードルを越えていく喜びが重なる。ボーカルグループだと、普通はこうくるよねって役割を、わざとひっくり返したりするんですよね。だから僕、ボーカルグループにいるんですけど。「ロマン」の歌唱後に説明してた部分、放送に乗るんじゃないかな?



——なるほど。セオリーならこういうハーモニーで、上は誰、下は誰って大体決まっているけど、そこを別の人にしたり?

黒沢:そうそう。平原さんは何でもできるからさ。 個人的には「This Is Me」でアルノさんがちゃんと自分の良いところを分かって、「アルノさんが歌うならここだよね」ってところをちゃんと入れてきてたのが、すごく嬉しかった。音楽がすごく好きな中西アルノと、その中にちゃんと自分の居場所を作ることができる中西アルノ。その両方を見ることができたんですよ。それが僕はとても楽しかったです。


中西:いやいやいや(照)。



——「This Is Me」って、周りの4人が声量モンスターなわけじゃないですか。

黒沢:ははははは(笑)。確かに。


中西:いやもう、本当に(笑)。



——そういう時、自分の個性をどう解釈して、どう出そうと思うんですか?

中西:以前は、良くも悪くも力が入っちゃうことがあったんですが、黒沢さんが私の歌の良いところを、ずっと、たくさん言い続けてくださって。それで自分に無理を強いることがなくなっていったんです。その変化をふまえての「This Is Me」の歌割だったかなと思います。



——今日は朝からリハーサルも含めて、1日にライブを3本やっているみたいな感じだったと思うんですよ。

黒沢:そうだね。大変だったね。



——あと、過去に番組で1回セッションしたとはいえ、2年も前の曲だったら、最初からやるのと同じ状態だったんじゃないですか?

黒沢:今回のために覚えたよね。


中西:そうです、まさに(笑)。



——最後に。2人にしか分からない、今日のリハーサルと本番の違いがあったら教えていただけますか?

黒沢:自分のことで言えば「ロマン」。ハモリのパートを本番で忘れてしまって、下に行ったり、ユニゾンしたりしています。でもどっちでも成立するから、どっちだっけって思いながら、歌ったりしていて。時には「こっちだ!」「いや、違った!」なんてこともあるけど(一同笑)。


中西:それで言うと、前半の放送回になるんですけど「Bring It On Home to Me」のラストのところが、あの……リハとまったく違っていて(一同爆笑)。


黒沢:そうそうそう!(根本)要さんが真っ直ぐ行くのかと思ってたら、うぇぇえいぇ~!!とかいっちゃったんだよね。


中西:真っ直ぐに重ねていこうと思っていたら、まさか、動いてくるとはって感じで。どうしよう……って大焦りしながら、♪Fu~♪(と柔らかい発音で少し歌う)って、乗っかったりしてたんですけど。


黒沢:やってたね!ちゃんと合わせて入れてきてた。前だったら、例えばハモらずに終わってたと思うんですよ。もちろん、それも間違いじゃない、正解。でも今回すごいのは、ちゃんと爪痕を残したところだよね。



——来年もライブあるといいなぁ。

黒沢:そうですね。来年はキャパを増やして……って、これは、まだ僕が勝手にそうなったらいいなって思っていることですけどね、はい(笑)。これからもよろしくお願いします。


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『Spicy Sessions -THE LIVE- 第2部』

放送日時:2025年12月27日(土)午後11時30分〜深夜0時50分

放送チャンネル:CS放送TBSチャンネル1

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/series/yRNA2/

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