映画『弟とアンドロイドと僕』完成報告イベントが12/14(金)都内で開催され、豊川悦司、安藤政信、阪本順治監督が登壇した。
監督として円熟期を迎えた阪本順治が「これを撮らなければ自分は先に進めない」という覚悟で取り組んだ本作。自身の人生観や思索の後が色濃く反映した禁断の問題作となっている。主人公の桐生薫を演じたのは豊川悦司。阪本監督は脚本執筆前から主演に豊川をイメージ。ルックスや空気感も含め、役者としての持ち味を生かしつつ特異なキャラクターを創造した。義理の弟役には、エッジの利いた芝居に磨きがかかる安藤政信。いつも何かに苛立っている厄介者の危うさを、色気たっぷりに表現してみせた。その他の共演者には吉澤健、風祭ゆき、本田博太郎など個性的な演技派がしっかりと脇を固めた。
孤独なロボット工学者・桐生薫役の豊川は、阪本監督からのオファーを喜ぶも「一人称で書かれたプロットを読んだときはビックリ。タイトルも3度くらい聞き直しました。正直迷った」と苦笑い。それでも「阪本監督の新しい面を改めて見せつけられた気がする」と共に新境地に挑んだ。
桐生の腹違いの弟・山下求役の安藤は映画『亡国のイージス』(05)以来の阪本組ゆえに「知らない番号から連絡がきて、最初は電話に出ませんでした。そうしたら阪本監督から留守電が入っていた」と明かし「最近の僕は連続ドラマを中心にやっていたので、映画監督を核にしている人とやりたかった。ちょうど僕も事務所を辞めてフラフラしていた時期だったので、阪本監督に自分の住所を教えて脚本を送っていただきました」とオファーの経緯を説明。その脚本については「今までの阪本監督作品とは違い、ビター。大人になったなあと思った。そこに立ち合いたいと思った」と素朴な感想を述べた。
阪本監督曰く、実現しなかったオムニバス映画のために創作したストーリーが本作の原点にあるという。「個人的なモチベーションで始まる閉じた物語をやりたかった。還暦を迎えたことで、今やらないと技量も感覚も体力も落ちていくぞ!という自分の声が聞こえた。温めていた企画というか、持ち続けていたものを今こそやらせてほしいと成立した作品です」と製作の経緯を説明した。
意外なことに豊川と安藤は本作が初顔合わせ。安藤は豊川について「役者の大先輩であり、阪本監督の『顔』(00)での豊川さんの登場シーンがカッコ良くて、色っぽくて好き。『新・仁義なき戦い』(00)も色気があってカッコいい。そんな豊川さんと阪本監督の作品でご一緒できることを楽しみにしていた」とリスペクト。一方の豊川も「安藤さんは僕の中ではアーティストであり、無頼であり、一匹オオカミ的な俳優さん。同業者から見てもカッコいい数少ない俳優の一人。空気、風、存在感をまとっている人です」と返礼した。
映画の内容にちなんで“孤独を感じる瞬間”を聞かれた阪本監督は「孤独というか、家でコンビニの賞味期限切れのおにぎりを食べているときは寂しかった。でも俺は一人でフードロスと戦っているだ!と思うようにしています」と笑わせた。豊川は「家で家族が誰もいなくて自分一人の時は、孤独というか一人ぼっちなんだと強く思う瞬間はある。そんな時は、心筋梗塞かと思うくらい胸が締め付けられる」と苦笑い。安藤は『MIRRORLIAR FILMS』(21)で監督デビューしたことに触れて「手を差し伸べて抱きしめてあげたくなるほどに孤独だった。当時はゲッソリと痩せて、一人で戦っている感がありました」と映画監督の孤独を実感。
最後に豊川は「この映画が旅立って日本にとどまらず、色々なところや世界に広がり、また僕のところに戻って来た時にどんな映画になっているのか。凄く楽しみ」と公開後の反響に期待。安藤は「僕は観て感じ取るような映画が好き。そんな映画を好きな監督とやれてよかった」と自信。阪本監督は「インパクトのある映画を撮りたかった。その一心。撮影から数えて2年間公開は延びたけれど、逆に今の時代に呼ばれた気がする。正解を持たない作品かもしれないけれど、観た人それぞれでもう一つの物語を作って楽しんでほしい」と公開を心待ちにした。映画『弟とアンドロイドと僕』は2022年1月7日(金)より全国公開。
映画『弟とアンドロイドと僕』
出演:豊川悦司、安藤政信、風祭ゆき、本田博太郎、片山友希、吉澤健
脚本・監督:阪本順治
提供:木下グループ
配給:キノシネマ
© 2020「弟とアンドロイドと僕」FILM PARTNERS
2022年1月7日(金)よりkino cinéma横浜みなとみらい・立川髙島屋 S.C.館・天神ほか全国順次公開