記事内に広告が含まれています。

大西利空&伊礼姫奈、映画『火の玉を見た』の独特な世界観と撮影エピソードを振り語る

注目の若手俳優・大西利空が初主演を務める映画『火の玉を見た』ジャパンプレミア上映Q&Aが、2026年10月30日(金)角川シネマ有楽町で開催され、出演者の大西利空、伊礼姫奈、監督を務めた矢座孟之進が登壇した。

映画『火の玉を見た』東京国際映画祭ジャパンプレミア上映Q&A

第39回東京国際映画祭「Nippon Cinema Now」部門作品の本作は、家族の崩壊に直面した主人公の高校生タケシ(大西利空)が、両親が離婚の危機で揺れるなか、幼なじみのアカリ(伊礼姫奈)と再会。アカリは彼に「火の玉を見た」という不思議な話を告げると、家族の問題から逃れるようにして、タケシは火の玉を探しはじめる…。



矢座孟之進監督、自身の実体験をもとに脚本を執筆

矢座孟之進監督『火の玉を見た』

最初の質問では、オリジナル脚本である本作の着想について矢座監督に質問が寄せられた。矢座監督は「今回の映画は僕の実体験と言いますか、映画にもあるように、自分が高校1年生の時に両親が離婚しているんですが、同じタイミングで火の玉を見たという不思議な話をされて、火の玉を探していた時期がありました」と、自身の過去が物語の出発点になったことを明かした。


脚本を書いたのは大学3年生の頃。それまで大学で制作してきた短編映画について、「現実で問題を抱えた主人公が、空想上の楽園のようなものを追いかけて、現実から逃げていくような作品ばかり撮ってきた」と振り返る。そして、ある時、自分が撮ってきた作品は過去の自分自身について映画を撮ろうとしていたのではないかと気づいたという。「気づいた時には、遠回りするんじゃなくて、直接それを映画にするべきだろうと思って脚本を書いたのが最初のきっかけです」と語り、本作が自身の経験に深く根差した作品であることを明かした。

スポンサーリンク


大西利空、感情を表に出さないタケシ役に苦労 撮影前には4人で本読み

大西利空『火の玉を見た』

続いて、オーディションを経て出演が決まった大西と伊礼に、それぞれ役作りや撮影時に工夫したことについて質問が寄せられた。大西は「オーディションで決まって、すごくうれしい気持ちと、やっぱり頑張らないとという気持ちがありました」と当時の心境を回想。本作については、登場人物の感情が表に出る場面が少ないことから、演技面で難しさもあったという。「皆さんが見られた通り、めちゃめちゃストーリーがはっきりしているわけではなくて、人の感情が表に出る場面がすごく少ない作品。その淡々と話す中で表現するというのは、すごく苦労しました」と振り返った。また、撮影前には監督と大西、そして劇中の家族を演じる出演者4人で集まり、本読みを実施したという。「撮影に入る前に監督と僕は、家族4人で集まって本読みをしました。淡々と話すということをあまりやってこなかったので、そこで少し触れることによって、現場ではすごくやりやすかった印象があります」と、事前の準備が撮影を支えたことを明かした。

伊礼姫奈『火の玉を見た』

伊礼はオーディションで列車のシーンと美術館のシーンを演じたと説明。「オーディションの時から監督の頭の中を覗きたいぐらい、非現実的な世界とも捉えられる内容で、難しいなと思いました」と独特の世界観に触れた。しかし、事前の準備や撮影現場で監督としっかり会話を重ねることができたため、「不安なく監督についていきました」とコメント。作品への理解を深めながら役に向き合ったことを語った。



ピアノシーンに込めた両親との距離感 ショパン「雨だれ」を選んだ理由

作品の前半に登場するピアノのシーンや、両親との距離が近づく場面についても質問が寄せられた。特に、母親と父親それぞれとの場面で、身体の動きやカメラが接近する演出にどのような意図があったのか質問が寄せられた。矢座監督は「タケシという主人公のキャラクターと、母親、父親との距離が近くなる場面を前半に作りたかった」と説明。撮影ではロングテイクを用い、カメラが一定の距離で待ちながら、タイミングを見て被写体に近づく手法を取り入れたという。「身体が接近する時に、母親の場合と父親の場合では、それぞれ違う意味を持っている。表層的に見れば、例えば父親が歩み寄っているように見えるけれど、実際はそうでもなさそうだったりする。そこでパラレルに作ることによって、対比ができたのかなと思います」と演出の狙いを明かした。


また、劇中で印象的に使用されるショパンの「雨だれ」についても、監督が選曲の背景を説明した。本作では雨の表象が長く続いており、前半では登場人物が植物に水をあげる場面、後半では水滴が落ちる場面など、水を通じた対比が描かれている。「水がポタポタと落ちることを考えている時に、一番最初に想起したのが『雨だれ』でした」と監督。左手の音が一定のリズムで続く様子が、雨粒の落ちる音を連想させたことが選曲の理由の一つだったという。さらに「単純に僕がすごくこの曲が好きということもあります。母との思い出だったり、そういうところもあるのかもしれません」と個人的な思いも交えて語った。



監督の頭の中を押し付けない 伊礼姫奈が感じた現場での信頼関係

独特の世界観を持つ本作について、監督がキャストやスタッフとどのようにイメージを共有していったのかという質問も。矢座監督は、撮影監督とは映像の参考資料などについて話し合ったものの、現場に入る前からすべてを決め込んでしまうことには慎重だったという。「映画というのは生ものであるというか、現場で作っていく自由度をいかに保つかというのも、監督としては大事なのかなと思います」と持論を展開。そのうえで「僕がやりたいことを押し付けすぎない。そして、やりたいことがあるんだということも出しすぎないことに気をつけました」と、現場で大切にしていた姿勢を明かした。

これを受けて大西は、監督に分からないことをすぐに質問していたと振り返る。「難しい作品内容だったので、台本を読んですぐに、このシーンはこういう意図があると理解できるわけではなかった。分からないことがあったらすぐ聞くようにしていました」と説明。監督については「すごく頭の中が整理されているなと感じていました。難しい質問でもすぐに答えが返ってくるので、そこはすごく助かっていました」と信頼を寄せた。


伊礼も監督とのやり取りを振り返り、「直接的にこうしてほしいと言われるというより、気づいたらその世界に導かれていたような感覚がありました」とコメント。撮影中には監督の頭の中を深く考えずに演じていた場面も、完成した映画ではしっかりと成立していたことに驚いたといい、監督の演出と現場でのコミュニケーションが作品の世界観を形作っていったことをうかがわせた。


大西利空がお気に入りのシーンを紹介「服を買うシーンが一番好き」

大西利空

繰り返し鑑賞することで新たな発見がある本作。観客から、それぞれ注目してほしいシーンや演出へのこだわりについて質問が寄せられた。大西は、自身のお気に入りとして「服を買うシーン」を挙げた。「服を買うシーンが一番好きで、構図も面白いですし、非現実的な物語が進んでいく中で、店員さんが噛んでいたと思うんですけど(笑)、そこはすごく現実的だなとも捉えられる」と理由を説明。どこか気が緩むような、思わず笑ってしまう瞬間があることも魅力だという。さらに、その後に靴を持ってくる場面にも触れ、「靴にフォーカスされて、それがきっかけで家族の関係が進んでいくのが、すごくいいところだと思うので、僕的にはそこを見てほしいです」と、物語の中で重要な意味を持つ小道具にも注目してほしいと語った。


伊礼は、本作の魅力について「見るたびに感じるものが違うというのが、すごく不思議」とコメント。自身も何度見ても最後に残るものが違うといい、「自由にいろんな角度で捉えていただきたいです。本当に内容もそうですし、目でも耳でも楽しめる作品だと思っているので、全部が魅力です」と作品への思いを伝えた。


矢座監督も、映像だけでなく音へのこだわりを強調。大きな劇場で鑑賞した際には、環境音が映画の世界をしっかりと作り上げていると改めて感じたという。また、セリフについても「言葉の意味的なものを完全に無視して、セリフもある種一つのサウンドとして、即物的にこの映画を見ていただけたら」と独自の鑑賞方法を提案。音や声の響きにも注目してほしいと呼びかけた。


矢座監督が映画制作におけるAIの使用について回答

映画制作におけるAIの使用について質問が寄せられ、本作の制作においてAIを活用した部分があるのか、また、人間の手で作るべきだと判断した部分はあるのかという問いに、矢座監督は脚本執筆と撮影の時期を説明。「脚本を書いたのは2024年の初めで、撮影をしたのが2025年の6月でした。その期間は、まだAIがそんなに発達していなかったので、AIを使いませんでした」と回答。さらに、仮に現在この映画を作り直すことになったとしても、AIを使うことはないだろうと自身の考えを明かした。「非常に個人的な体験についての映画であるわけだから、AIに頼らず、素材やアイデアというものはあるんじゃないかなと思います」と説明。一方で、完全なフィクション作品であればAIを使う可能性もあるとし、今後の映画制作におけるAIとの向き合い方については、まだ模索していく段階であると語った。


監督自身の実体験を出発点に、家族の問題や少年の心の揺らぎを独特の映像表現で描いた映画『火の玉を見た』。大西利空と伊礼姫奈が語った役への向き合い方、そして矢座監督が明かした演出や音へのこだわりからは、作品に込められた繊細な意図が伝わるQ&Aとなった。



【動画】大西利空、初主演作『火の玉を見た』を語る!伊礼姫奈と東京国際映画祭Q&Aに登壇

スポンサーリンク
スポンサーリンク




映画『火の玉を見た』

出演:大西利空、小谷興会、伊礼姫奈、楠麻里、足立智充

監督・脚本:矢座孟之進

プロデューサー:石井智久

制作会社:ランプ

©2026 「火の玉を見た」製作委員会

2027年全国公開予定

テキストのコピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました